私の思う面白い寄生虫5選!【宿主を操作する】

ロイコクロリディウムいきものばなし
実物はショッキングなのでイラストで・・・
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「寄生虫」は想像以上のバイオマスを持った生物。

バイオマスとは「生物量」を指し、簡単に言うと特定の地域でどのくらいの重量を持っているかという事。

※正しい理解はこちら 

2008年に科学雑誌のネイチャーに掲載された論文では、寄生虫が生態系において多大な生物量を占めていることが発表されたそうです。また、世界で知られている生物の半分は寄生虫であるという推定もなされているようなんです。※参考記事

日ごろの生活の中ではあまり気にすることはないですが、想像する以上に生態系に影響力を持つ存在である寄生虫。他の生物に「寄生」するという特徴ある営みと併せて怖いもの見たさで興味を持つ人も多いのではないと思います。

寄生虫とは何か?

そもそも寄生虫って何かを調べていくと細々と別れていることが分かった。まず「寄生生物」という括りがあり、「寄生虫」と「寄生植物」に分かれる。寄生虫の中でも、体内に寄生するのを「体内寄生虫」、表面に寄生するものを外部寄生虫というらしい。一般的には、体内に寄生するものを指して寄生虫を指すことが多いと思うので、今回の記事ではそれらを紹介したいと思います。※ちなみに外部寄生虫と呼ばれるものは「ノミ」とか「マダニ」

よくテレビでも紹介される「ロイコクロリディウム」

「ロイコクロリディウム」は寄生虫の中だと結構有名。寄生虫の生態を説明する例としてもよカタツムリに寄生している様子を紹介されている生物だし、触角の部分をサイケデリックにする様はとてもショッキングだ。

ロイコクロリディウム

実物はショッキングなのでイラストで・・・

最終宿主に食べられやすいように宿主を変化させる寄生虫。

ロイコクロリディウムはカタツムリに寄生した後、触覚を芋虫のように色や形を擬態する性質を持つ、小さな幼体が触覚に集まって脈動する姿は率直におぞましい。カタツムリは違和感を感じて触覚を回転させたりするわけであるが、その様がいかにも芋虫に見えるという訳である。

なぜそんなことをするのかというと、最終宿主である鳥に見つかりやすくする為だ。カタツムリを食べた鳥の体内で成虫となり生殖をしたのちにフンとして体外に排出され、それをカタツムリが食べるというサイクルを繰り返しているのである。一般的な寄生虫がこっそりと最終宿主に食べられるのを待っているのと比べると、能動的に「食べられにいく」生態がとても特徴的なため良く紹介されるのだと思う。

知らぬ間に寄生され、体を改造されてしまう恐怖。カタツムリに感情があるかどうかはわからないというかたぶんないと思うけれども、かわいそうで残酷だ。ただ、寄生虫の魅力は食べる食べられるという単純じゃない生存戦略に魅力を感じる部分にある。そういった点ではこのロイコクロリディウムは色んな寄生虫を調べてみたいとう興味を湧かせるきっかけとなる生き物なのだと思う。

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ロイコクロリディウムの動画を発見したので紹介

子供のトラウマメーカー「ハリガネムシ」

ハリガネムシと聞いたら、カマキリの腹からウネウネと這い出す姿を思い出す人も多いだろう。あんなものを子供が見たらきっとトラウマになってしまうに違いない。

ハリガネムシ

トラウマメイカーのハリガネムシ

寄生先の昆虫の生殖機能を奪い、行動を操る寄生虫。

ロイコクロリディウムが宿主の体を変化させる寄生虫だとすると、ハリガネムシは行動を変化させる(操る)寄生虫である。まずハリガネムシは水の中で卵から孵化すると水底で餌を食べている昆虫等に寄生する。寄生した昆虫の腸内でシストと呼ばれる状態に変化しじっと耐えて捕食される時を待つのである。この状態の時には-30℃の環境に置かれても耐えられる程の耐久性を持っている。

水生昆虫(ユスリカやカゲロウなど)が羽化をして飛び立ち、他の陸生昆虫(カマキリ・キリギリス・カマドウマ)などに捕食をされると成虫になる。比較的広い範囲の生物を最終宿主とできるようで、シストの状態で例えば装飾昆虫の体内に侵入すればそこでも成虫になれるし、魚の体内から成虫が発見されることもあるようだ。偶発的にだが人への寄生例も確認されているとのこと。怖い。

※シスト/寄生虫だと休眠状態に入った時に形成される膜を張った状態。腫瘍みたいなイメージ。

ハリガネムシで特徴的なのは、寄生した昆虫の脳に特殊なたんぱく質を注入することで行動をコントロールして水辺に導く(飛び込ませる)という点だろう。また生殖機能を奪ってしまう点も恐ろしい。寄生された昆虫は繁殖の可能性を奪われ、自殺へと導かれてしまうのである。寄生先昆虫の尻から這い出た成虫ハリガネムシは、水中で交尾し、再び卵を大量にばらまくのである。

水中で羽化するハリガネムシがどうして陸上の生物を最終宿主とするかというと、それがメリットになるからではないかということらしい。つまり水生昆虫でなく陸生昆虫を魚に食わせるという行動をとることで、卵が羽化した際に寄生先となる水生昆虫の数を維持でき、次代が寄生しやすくなるのである。余談だが、川に住んでいる魚にとってもハリガネムシの存在の恩恵は大きく、例えばサケなどが年間に得るエネルギーの6割がハリガネムシによって川に飛び込まされているカマドウマによって賄われているということが分かっている。子供にトラウマを植え付けるハリガネムシも生態系という視点でみると重要な役割を占めているのである。

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ハリガネムシの動画を発見したので紹介

 

子を育てる為に他の昆虫の体を利用する「クモヒメバチ」

寄生という手段は「子育て」においても良く利用されている。例えばクモヒメバチはその名の通りクモに卵を産み付け幼虫を寄生させることで「子育て」を押し付けている。

クモヒメバチのイメージ

あくまでイメージです

成長に必要な環境を寄生先のクモ自身に用意させる寄生虫

クモヒメバチに卵を産み付けらえたクモは、幼虫にその体を食われ成長の為のエネルギーにされてしまう。それだけであればよくありそうな話だが、クモヒメバチの恐ろしいところはクモの持つ能力すら子育てに利用する点だといえる。幼虫はクモを食い尽くす前に特殊な化学物質を流し込み、自身が蛹に変化した後に支える為の糸の束を作らせる。この糸は通常クモが巣作りに用いるものとはことなり高い強度がある。つまりクモは寄生するクモヒメバチの幼虫が無事成虫になる為に最適な環境を、わざわざ特技を利用しせっせと作らされているわけである。

どうやらこれは、化学物質によってクモが脱皮をする際に使用する「休息網」を使って増網することを誘発しているようで、寄生によって増網行動をコントロールするメカニズムをクモ糸の工業化につなげられないかというアプローチもあるらしい。参考記事

最終的にはクモは幼虫に食い殺されるわけではあるが、ただ栄養源として利用するだけでなく生物として持つ特殊能力まで活用しようとする効率性と恐ろしさに改めて寄生虫の面白さを感じる。

クモヒメバチの動画が有ったので紹介

ゴキブリを苗床として活用する「エメラルドゴキブリバチ」

クモヒメバチと同じく昆虫を幼虫の宿主とするが、こちらはゴキブリの行動をコントロールする。他の昆虫に寄生させ宿主を餌とする生態をもつ生き物をパラシトイド(捕食寄生者)と呼ぶようだ。

あくまでイメージ

これはたぶんスズメバチ。本物はエメラルド色で体もちっちゃいです。

自ら手で奴隷化したゴキブリを監禁する稀有な行動

まずゴキブリに狙いを定めたエメラルドゴキブリバチは一度目の毒を注入し、ゴキブリの前肢を麻痺させる。これは2撃目の毒を正確に打ち込む為の毒。動けないゴキブリに対して満を持して自らの意思で動けなくする物質を脳内に打ち込むのだ。某ジャンプ漫画ででてきた弐撃決「殺」ならぬ弐撃決「従」である。この状態になったゴキブリの触覚を半分ほど噛みちぎって咥えて引っ張り歩かせて、ゴキブリ自身の巣穴へと案内させるのである。

巣穴に到着するとエメラルドゴキブリバチはゴキブリの体に卵を産み付け、巣穴を土や石で塞いでしまう。外界から隔絶された監禁状態に置かれたゴキブリは身づくろい以外の行動をできず、じっとしたまま生涯を終えることになるのだ。幼虫(見た目芋虫)が孵化するとゴキブリの腹を食い破り生きたまま内蔵を貪りはじめ、蛹になる直前まで死なないようにゆっくりと食べられてく。ゴキブリは死後、エメラルドゴキブリバチの蛹を守る為の「ゆりかご」になるのである。ハチでもゴキブリを幼虫に生きたまま与える行動をとる種が多数いるようで、ゴキブリがいかに生態系の中で餌として重要なポジションを築いているかが伺える。

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エメラルドゴキブリバチの動画が有ったので紹介

 

アリから哺乳類へを宿主を変える「槍型吸虫」

プラナリアやサナダムシと同じ扁形動物の一種である槍型吸虫は、中間宿主であるアリを最終宿主となる牛や羊・豚などに食わせるという特殊な行動をとる点にある。

あくまで扁形動物のイメージ

変形動物のイメージ。これはコウガイビルです。

植物の先端でじっとさせる「待ちの戦略」

槍型吸虫は、カタツムリ(軟体動物)→アリ(昆虫)→草食動物(哺乳類)と様々な種の宿主を媒介する。カタツムリの体内で羽化した槍型吸虫はスライム上の塊となって排出されて、それはアリの餌となる。アリの体内を巡り脳に達した槍型吸虫は、今度はアリの行動をコントロールして植物の先端を顎で加えさせてじっと待機させる。最後にじっとしているアリごと草食動物に食べられることで最終宿主となる哺乳類にたどりつくのである。

最終宿主の体内で増えた槍型吸虫は糞便と共に体外に排出され、今度はその糞便をカタツムリが食べることでループを繰り返していくのである。本来昆虫を意識して食べない草食動物に食べられる可能性を最大にするために、アリの行動をコントロールするという正に脳を乗っ取ってしまう寄生虫なのだ。

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槍型吸虫の動画

ざっと探したところ見つかりませんでした。

まとめ

今回例に挙げたいずれの寄生虫も、「宿主を操る」ことで種を維持する能力を獲得している。一見「ずるい」と考えがちな寄生という行動ではあるが、その分生態系の中で重要な役割を占めていたハリガネムシのように上手に食物連鎖に溶け込むことが重要な繊細な生存戦略でるに違いない。彼らが種としてのサイクルを成り立たせるためには、想像できない程膨大な年月をかけた試行錯誤が必要だったであろうことを考えると、生命というものへの神秘を感じざるを得ないので、とっても興味深いです。

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