ヒアリ(Solenopsis invicta)は『世界の侵略的外来種ワースト100』に指定されており、日本でも特定外来生物に認定されている攻撃的な蟻の一種です。
漢字で書くと『火蟻』。
2017年6月に日本で初めて確認され警戒が強められています。
これまでの発見例は16都道府県で64事例にも上り、定着はしていないとされているものの早期の予防と対策が必要とされています。※2020年12月発表時点(環境省)
ヒアリ(アカヒアリ、火蟻)とは
単にファイヤーアントというとトフシアリ属の蟻全般をさすこともあるので、ヒアリを指す場合はより具体的に英名は『Red Imported Fire Ant』と呼ばれることが多い。
和名:ヒアリ(アカヒアリ)
英名:Red Imported Fire Ant
学名:Solenopsis invicta
ヒアリの概要
南アメリカ(アルゼンチン)原産のアリ(蟻)の一種で雑食性で「腐肉食者」であるが、極めて攻撃的で節足動物の他にも爬虫類、小型哺乳類、更には鳥類の営巣や雛の生育にも影響を及ぼしえる。
牛、梅、鶏などの家畜への死傷被害もある。
見た目の特徴見た目の特徴として、体がツヤツヤしており赤茶色で腹部はやや暗め。
また、働きアリは「多型」で大きさが様々に異なるという特徴がある。
働きアリ(ワーカー):2.5~6㎜
最も数が多く卵や幼虫の世話や外敵から巣を守り外敵を攻撃します(刺す)。
女王アリ:7~8㎜
羽化ごは翅があるが交尾後には翅が落ちる。
寿命は6~7年で毎年25万個の卵を産む。
雄アリ:5~6㎜
体が黒っぽく翅がある。交尾の為に巣を離れるが寿命は数日。
ヒアリの侵入経路
日本へは船や飛行機のコンテナや貨物に紛れ込んで侵入してくるケースが多くみられます。
その為諸外国との貿易が活発な港湾をもつ県での発見報告が多くをしめているようです。
また内陸県においても貨物の梱包資材などに紛れて侵入したヒアリに刺されるなどの被害が報告されており、経済活動(物流)の流れに沿って生息域を広げていることが伺えます。
ヒアリの巣(コロニー)
巣(コロニー)として最大60㎝にもなる大きな蟻塚を作り、地下には放射状の長さ数十メートルにもなる迷宮状のトンネルを掘る。
蟻塚を破壊したとしても、巣に異変を感じた女王蟻は逃げ出して場所を移して新たな巣をつくる為、一度定着してしまえば駆除は極めて困難になることが予想されています。
アメリカの例では、ヒアリ(他外来種)の侵入に対して徹底的に農薬を散布することで対応しました。
その徹底っぷりはレイチェル・カーソンが『沈黙の春』という書籍で社会へ警鐘を鳴らしたほどでした。
しかしながら結果としてはアメリカ東南部において現在ヒアリは一般的にみられる蟻として定着してしまい、他の外国にヒアリを移入させる側になっています。
アメリカではヒアリによる年間の被害額は約6000億円にも上るといわれており、様々な被害をもたらしています。
『沈黙の春』(ちんもくのはる、Silent Spring, ISBN 978-4102074015)は、1962年に出版されたレイチェル・カーソンの著書。DDTを始めとする農薬などの化学物質の危険性を、鳥達が鳴かなくなった春という出来事を通し訴えた作品。
引用: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
唯一ニュージーランドでは侵入初期に徹底した対処を行い根絶に成功しています。
ヒアリによる被害
人への身体的被害だけでなく多くの被害をもたらすリスクがある為、既に多くの国で莫大な予算を掛けて防除活動が行われています。
身体的被害
刺されるとやけどをした時のような強い痛みを生じ、体質によってはアレルギー反応を示します。
共通の症状
焼けるような痛み。刺された箇所は赤く腫れあがり膿疱が出来る。
ヒアリ類の毒に抗体を持っている場合
蕁麻疹や息苦しさ、声枯れ、めまい、激しい動機。
物的被害
電気設備やインフラをかじるなどの被害を及ぼします。
電線をかじって停電を引き起こしたり、ショートさせて火災の原因になる可能性もあります。
経済被害
農作物を害したり、家畜を襲い経済的な損失を招きます。
海外ではヒアリに頻繁に指されるなどの被害から離農者が増え耕作放棄が増えるなどの問題も起こっています。
環境被害
在来種を駆逐するなど生態系に多大な悪影響を与えます。
日常生活への被害
花見・ピクニック・BBQなどのレジャーにおける安全性の確保が難しくなり制限されます。
特徴的な性質
社会性昆虫としてとてもユニークな性質を持つ蟻ですが、ヒアリはその中でも興味深い特徴を持っており研修対象としても注目されています。
2種の巣(コロニー)形態
ヒアリの巣(コロニー)には女王蟻が1匹の単女王制コロニーと2匹以上の女王蟻が同居する多女王制コロニーが存在しています。
この違いは緑髭遺伝子である「Gp-9遺伝子」と呼ばれる組み換えの起きない超遺伝子の働きによるもので、同じGp-9遺伝子を持つ女王蟻同士は他女王制コロニー間で受け入れられる傾向が高い為起こると言われています。
反面、単女王制コロニーに他女王制コロニーの女王蟻が入っても単女王制コロニーの働き蟻(ワーカー)は排他的な行動(攻撃)を取ります。
単女王制コロニー
女王蟻と雄蟻が巣から飛び立ち元の巣から離れた場所(数キロ先とも)に新しい巣をつくります。
巣(コロニー)の成熟までは時間が掛かるという特徴があります。
多女王制コロニー
巣の中や巣の周辺で交尾を行い、もともとの巣の近辺に巣別れして巣(コロニー)を巨大化させていきます。
巣(コロニー)が短時間で成熟する特徴があります。
蟻玉(ヒアり玉)
原産国では河辺などにも住んでいるヒアリは巣(コロニー)が水没すると女王蟻、卵、幼虫を中心として働き蟻(ワーアー)達が集まって組み合うことで蟻玉(ヒアリ玉)を形成します。
水に浮いて流されながら新しい巣(コロニー)を作れる地まで流されていきます。
原産国のアルゼンチンでは他にも協力なライバルとなる生物や天敵となる寄生蠅が存在しており、特別協力な蟻であるとは言えないようです。生まれた環境で生き抜く為の術が他の環境においてはとても強力であることは外来種と在来種を語る上で重要なことではないでしょうか。
ヒアリ対策
ヒアリを防除ついて省庁や自治体を中心として様々な対策が行われています。
「日本に入れない」入ってきても「定着させない」とこがとても重要です。
その為に検討されている取組みとして特徴的なのが「ヒアリ犬」についてです。
ヒアリ被害が拡大している台湾やオーストラリアではヒアリを探知する能力を備えた「ヒアリ犬」が育成されているそうです。
日本へは2018年に台湾のヒアリ調査・駆除会社である『モンスターアグロティック』社から2匹のビーグルがヒアリ犬として日本で開かれる学会での発表に向けて初上陸しています。
導入に掛かるコストを含めて実用性について様々な意見のあった「ヒアリ犬」についてですが、その後の2020年2月には環境庁の専門家会合で探知犬(ヒアリ犬)の導入を検討する方針を決めたというニュースも出ており、どうやら前向きに進んでいるようですね。
もしヒアリを見つけたら
ヒアリは人間にとって有害な面があるものの、人が死ぬことはめったになく対策は大げさだという意見もあります。
しかしながらすでに外来種として定着している外国では多方面での被害が起きてしまっているのも事実です。
幸いまだ日本には定着していないといわれています。
生態系への大きな被害が予想されることを考えると将来の被害を未然に防ぐ為にもこのタイミングで積極的な対策が求められているといえそうです。
「ヒアリかな?」と思ったらすぐに連絡して日本を守りましょう!
参考文献・出典
・学校図書株式会社HP
『〜続・ヒアリの侵入について知るべきこと〜侵入地と原産地 それぞれの目から見た「ヒアリ」国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター任期付研究員 坂本洋典』
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